瞼の裏側にはいつも笑顔の神様がいる

2月, 2008 のアーカイブ

時計とライター

私たちが結婚した時、私とひまわりでこんな話をしました。

「なぁ、指輪買う?」

「う~ん、アタシ仕事で指輪はできないから他のものを買おうよ。」

「何にするか~?」

「2人でするんだから、時計がいいんじゃない?」

と言う訳で、私たちは結婚指輪の代わりに腕時計を買う事にしました。
2人で池袋の巨大なお店に時計を見に行きます。
とは言っても、それほど高い物を買う予算はありません。
それでも、私たちらしい綺麗な時計をペアで購入しました。
私たちは記念の時計を気に入って、いつも腕にはめていました。

そして、結婚して初めての私の誕生日。
ひまわりは私にプレゼントをくれたのです。
それは、YSLのターボライター。
魚釣りが好きな私にとって、ターボライターはとても便利な品だった訳です。
私はそれまで愛用していたジッポーを放り投げ、ひまわりが買ってくれたターボライターを使い出しました。
何よりもひまわりが心を込めてくれた物です。
それだけでも私にとって大切なものになりました。

しかしながら、非常にだらしの無い私であります。
半年ほど使った大切なライターを、どこかに置き忘れてしまいます。
ついに大切なライターは見つからずに、ひまわりに怒られてしまいます。

「もうアンタには何も買ってあげないわ。」

私もがっかりしましたが、ひまわりにも相当な失望感を味あわせてしまったようです。

そして時は流れ、私たちの間にはかけがえの無い宝物が誕生します。
息子のキアヌが生まれ、その間も結婚記念の時計は時を刻み続けていました。
ある日、仕事から帰ったひまわりは洗濯をしていました。
しかし、洗濯機からカラカラとおかしな音が聞こえてきます。

「お~い!洗濯機から変な音がするぞ~!」

「え?あれ~?ギョエ~!」

ひまわりは記念の時計をポケットに入れたまま、自分のズボンを洗濯してしまったのです。
慌てて時計を救助しますが、時すでに遅し・・・。
時計は時を刻む事をやめてしまったようです。
時計屋さんに持って行きましたが、直らないとのこと・・・。
ひまわりの落胆は相当なものでした。

「景気がいい時にでも、またペアで買おうよ。」

そう慰める私。
当然の事ながら、ひまわりを責める事は私には出来ません。
YSLのターボライターの件がありますから・・・。

最近は時計をはめずに携帯電話で時間を見る習慣になっていました。
気がつくと、私と同じようにパートナーを失くしてしまったペアウォッチは、電池が切れて動いていませんでした。
今度電池を入れてもらって、久しぶりにはめてみようかな・・・。

おかあさんの居場所

ひまわりが逝ってしまってから数日。
息子が言うんです。

「おかあさんはどこにいっちゃったのかなぁ?」

こういう時はなんて答えればいいのでしょうか・・・。
すかさずばあちゃんがこう答えました。

「きっとお空の上からキアヌの事をいつも見ているよ。」

さすが年の功。
いい答えをしてくれます。
空を見上げると、美しい月が出ていました。

「あ、おかあさんはおつきさまにいるのですか!」

キアヌはそう言って、月と話していました。

実は、その時はひまわりの戒名を、まだ付けていなかったのです。
その後、私の宗派であるお寺で戒名を付けていただくようにお願いに行きました。
そして数日後、ひまわりの戒名が届きました。
私たちはびっくりしたんです。
なんと戒名に、看護師の「看」という字と、「月」と言う字が付いていたんです。
勿論、ご住職には息子との会話はお話していません。
本当に偶然に、ご住職は「月」という字を戒名に入れてくださったのです。

ご住職にお伺いすると、月は仏教では「浄」に繋がる言葉で、汚れの無いという意味だそうです。
看護師という仕事を愛し、無垢な生き方をしたひまわりにこの名前を付けたという事でした。
奇しくも、キアヌがお母さんの居場所として信じた月が、ひまわりの戒名に付けられました。
もしかしたら、本当にお母さんはお月様に居るのかもしれないね、キアヌ。

神田さん、お帰りなさい

元モデルでタレントのK・Uさんが、ハネムーンから帰ってきたとテレビの芸能ニュースで言っていました。
あーそうですか・・・。
何でも、数千万円もかけた旅行だったと。
そりゃ良かったですね。

世の中、格差社会と言われて久しいわけです。
経済アナリストの森永さんという方がこんな事を言っておられました。

「年収2000万円以上の人は、もの凄く運がいいか、あるいは悪い事をしているかのどちらかです。」

K・Uさんのご主人様はパチンコ業界の方だそうで。
パチンコ業界が、世の中の役に立っているかと言えば、お金を流通させていると言う面では役に立っているのかも知れませんが、私的には無くなってしまっても全く問題が無い業界です。
悪い事をして勝ち組に座っているような人は問題外ですが、このご主人様もある意味運が良かった人なのでしょう。

私などは、どちらかと言えば運が無い負け組みなのかもしれません。
そんな負け組が何を言っても遠吠えになってしまうのでしょうね。
しかし、それを知った上で言ってやりたい。

勝ち組になった方のお金の使い方って、少し違う気がしませんか?

そりゃ、ご自分が稼いだお金ですから、なにに使おうが自由ですけど。
私ならば、せっかく稼いだお金をもっと有意義に、世の中の役に立つように使いたい。

例えば、毎年紅白歌合戦に豪華な衣装で登場する歌手の方がいますね。
ある年の紅白に、普通の衣装で出演して

「今年の紅白は衣装にかける予定のお金を、困っている方のために寄付をさせていただきました。」

と言ったら、世論はどういった反応をするでしょうか?
恐らくは、その人が歌う歌にも重みが加わり、歌手としても人間的にも多くの人の信頼を得る事になると思うのです。
どうせ衣装代として消え行くお金。
一時の話題や自己満足、芸能レポーターのネタとして消え行くお金よりも、数倍も有意義な使い方のように思えるのですが・・・。

夜の六本木や青山通りをフェラーリやベントレーを乗り回す勝ち組が排出するCo2。
私はどうせなら、そんな勝ち組を目指したくはない。
私が勝ち組に入る事があったなら、軽自動車やハイブリッドカーに乗って、その分木の一本でも植えてあげたい。
やがてバトンタッチする子供たちのために、少しでも美しい地球をのこしてやりたい。
私はそんな勝ち組を目指したい。

ある日、車中にて

それはまだ、息子が生まれていなかった頃のいつかの夏のお話。
ひまわりと2人で、どこかにドライブ出かけた帰り道の事でした。
高速道路を走っている私は、運転が長かったので少々疲れてまいりました。
サービスエリアで休憩を取ると、ひまわりが運転の交代を申し出てくれました。
「クルマはマニュアルでしょ!」が信条のひまわりは、結構運転が上手だったんですよ。

さて、ドライバーも交代して、私達のクルマは軽やかに再スタートをきりました。
その後、道は首都高速に入って行きます。

「アタシ首都高わからないから、道案内よろしくね。」

「はいはい、早めに指示をだしま~す。」

そう言ってパッセンジャーシートで楽チンの招き猫。

そして私達は、ある一台の大きなトラックと並走していたのに気付いたのです。
そのトラックにはこう書かれていました。

「馬運車 〇〇〇号」

何と、競走馬を運ぶためのトラックだったのです。
〇〇〇号とは、私達も良く知っている有名な牝馬の名前でした。
私もひまわりも、多少競馬に詳しかった(参照記事:一頭の競走馬から貰った物)ので、ちょっと気になったりしました。

「おぉ!馬運車だ!」

「〇〇〇号だって!乗っているのかなぁ?」

そんな会話をひまわりとしていました。
そうこうしていると、首都高速の分岐点がやってきます。

「ねぇ!アンタ!これはどっちに行けばいいの?」

「あぁ、えっとね、そのまま馬なりに・・・」

ひまわりはクルマを道なりに進めて行きました。
しばらくしてから・・・急に思い出したかのように・・・

「ねぇアンタ、馬なりってどういう意味よ。」

馬なりって言うのはだなぁ、競走馬を調教する時に、無理に追ったり何秒で走らせようとかしないで、馬の行きたいように走らせる調教法さ。馬の調子がいい時にそれを維持する為にそういう軽い調教をするんだよ。

「へ~、それじゃあどうしてさっきの道は馬なりなのさ?」

「それはだなぁアレだ、馬運車を見たから道なりって言おうとしたけど間違えて馬なりって言っちゃったんだ。」

「アンタ、アホだろ。」

しかしですよ、私に言わせれば馬なりと言われてもちゃんと道なりに進んだ君だって・・・ねぇ・・・。
やっぱり私達夫婦は、ウマが合ったのでしょうか・・・。