時計とライター
「なぁ、指輪買う?」
「う~ん、アタシ仕事で指輪はできないから他のものを買おうよ。」
「何にするか~?」
「2人でするんだから、時計がいいんじゃない?」
と言う訳で、私たちは結婚指輪の代わりに腕時計を買う事にしました。
2人で池袋の巨大なお店に時計を見に行きます。
とは言っても、それほど高い物を買う予算はありません。
それでも、私たちらしい綺麗な時計をペアで購入しました。
私たちは記念の時計を気に入って、いつも腕にはめていました。
そして、結婚して初めての私の誕生日。
ひまわりは私にプレゼントをくれたのです。
それは、YSLのターボライター。
魚釣りが好きな私にとって、ターボライターはとても便利な品だった訳です。
私はそれまで愛用していたジッポーを放り投げ、ひまわりが買ってくれたターボライターを使い出しました。
何よりもひまわりが心を込めてくれた物です。
それだけでも私にとって大切なものになりました。
しかしながら、非常にだらしの無い私であります。
半年ほど使った大切なライターを、どこかに置き忘れてしまいます。
ついに大切なライターは見つからずに、ひまわりに怒られてしまいます。
「もうアンタには何も買ってあげないわ。」
私もがっかりしましたが、ひまわりにも相当な失望感を味あわせてしまったようです。
そして時は流れ、私たちの間にはかけがえの無い宝物が誕生します。
息子のキアヌが生まれ、その間も結婚記念の時計は時を刻み続けていました。
ある日、仕事から帰ったひまわりは洗濯をしていました。
しかし、洗濯機からカラカラとおかしな音が聞こえてきます。
「お~い!洗濯機から変な音がするぞ~!」
「え?あれ~?ギョエ~!」
ひまわりは記念の時計をポケットに入れたまま、自分のズボンを洗濯してしまったのです。
慌てて時計を救助しますが、時すでに遅し・・・。
時計は時を刻む事をやめてしまったようです。
時計屋さんに持って行きましたが、直らないとのこと・・・。
ひまわりの落胆は相当なものでした。
「景気がいい時にでも、またペアで買おうよ。」
そう慰める私。
当然の事ながら、ひまわりを責める事は私には出来ません。
YSLのターボライターの件がありますから・・・。
最近は時計をはめずに携帯電話で時間を見る習慣になっていました。
気がつくと、私と同じようにパートナーを失くしてしまったペアウォッチは、電池が切れて動いていませんでした。
今度電池を入れてもらって、久しぶりにはめてみようかな・・・。
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