見れなかったDVD
まだひまわりは元気で、完治を目指して抗がん剤治療をしていた頃です。
彼女は一枚の新聞広告を持って、私の所に駆け寄ります。
「ねぇねぇ、コレ欲しい。」
手には DVD BOX の広告。
さて、彼女が欲しがっている作品は・・・。
そもそも、彼女が刑事コロンボを始めて観たのは、私の影響からでした。
コロンボ役のピーター・フォークの
「ウチのカミさんがねぇ・・・」というフレーズが大好きだった私。
〇曜洋画劇場で放送があると、必ず見ていたものです。
一緒に見ていたひまわりも、ピーター・フォークのあのとぼけた魅力に取り付かれてしまったのです。
「どうせ治療で仕事できないから、コレ全部観てやるんだ!」
そう言えば、4月の30日はひまわりの誕生日。
「よーし、俺がコレを買ってやろう。誕生日プレゼントだ。」
「え~だってアンタもコレ観たいんでしょう?どうしてアタシのプレゼントなのよ!」
我女房ながら、鋭い突っ込みだったのです・・・。
結局、注文したのはいいですが、ひまわりの誕生日には間に合わず、5月になってからの商品の到着になりました。
もう、半分くらい忘れてましたよ!。
忘れてしまう程の到着とあって、少々熱が冷め気味のひまわりさん。
そのうちゆっくり観ようと言うことで、しばらく放置プレー。
しかし6月の半ば頃になると、彼女の身体の具合が悪くなってきてしまったのです。
何をしてもすぐに疲れてしまい、ベッドに引きこもってしまいます。
「ベッドにノートPC持ち込んで、それでDVD見ようか、俺も一緒に観るからさ。」
「うん、でもリビングの大きいテレビで観たいなぁ。もう少し具合がよくなったら、一緒に観ようよ。」
そうこうしているうちに、6月が去り悪夢のような7月2日がやってきてしまいました。
入院生活の中で観れればいいと思い、ノートPCとDVDを2枚だけ、病室に持っていってあげました。
しかしとうとう、ひまわりは一枚も観る事が出来ませんでした・・・。
いつか一緒に見観ようと思って買った、刑事コロンボのDVD BOX・・・。
ひまわり・・・
まだ、四十九日法要まで少し時間があるから、1枚ずつ一緒に観ような。
あ、もう一つだけよろしいでしょうか?・・・
ウチのカミさんがねぇ・・・
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