バブル世代の亡霊
彼は少し寂しそうに、こんな話をしてくれました。
「ついにねぇ・・・3S-GTエンジンが廃止になるんですよ・・・。」
かつては、セリカ、カリーナED、コロナクーペ、エキシヴ、MR2、等に搭載されたスポーティエンジン3S型。
それのターボつきの最強ヴァージョン、3S-GT。
2リッター直4DOHCのナチュラルアスピレーションでも140psという出力を搾り出すこのエンジンは、ターボ加給で180psにまで過激さを増す。
後輪駆動車では唯一MR2に搭載されたが、そのすさまじいパワーのおかげでスピンしやすい特性になり、MR2の事故発生率が上昇。
その後は4WD車にのみ搭載される様になったと言う。
私も、かつての愛車であるセリカGT-RでNA型である3S型を体験しました。
ホンダやマツダのような高回転型ではなく、中低速でパワーを発揮するちょっと過激なエンジンでしたね。
使いやすく、またパワーもあると言う事で、EDやエキシヴといった4ドア車にも使われていたのも、なんとなくわかる気がします。
現在では唯一、カルディナに積まれているエンジンですが、カルディナが廃止されるに伴い3Sエンジンも廃止となったようです。
私はこのエンジンは、例のバブル期をリードしたエンジンだったと思うのです。
カタログ表示のパワーの数字がもてはやされていた時代。
「オレのクルマ、〇〇馬力だぜ!」
と言った会話が普通に成立していたバブル期。
パパに高級3ナンバー車を買ってもらえない若者達の、自分の力だけでギリギリ買える価格設定の最後の砦だったセリカ、プレリュード、シルビアといった魅力的なクルマたち。
セダンでもなく、スポーツカーでもない、スペシャリティーカーという位置を決定付けたのは、彼らのようなクルマたちだったと思います。
あの、昭和から平成に変わった頃のバブルというお祭り騒ぎは、私たちに何を残してくれたのでしょうか?。
私はバブルという恩恵にはあまり恵まれませんでしたが、その後のバブルが崩壊した影響もあまり受けませんでした。
その後の不景気から、格差社会へと変わった現在。
私のような個人経営者や中小企業からは、景気のいい話は殆ど聞かれません。
もしかすると、一度お祭り騒ぎを味わってしまったせいで、バブル期並みに景気が戻らない限り、好景気とは感じられなくなってしまったのかも知れません。
現在、過激に回る3S-GTエンジンは、低燃費で使いやすい小型エンジンに取って代わられようとしています。
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